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2022年末に発売され、ずっと棚に置いてあった本
「建築家は住まいの何を設計しているのか」著者 藤山 和久
が、なかなか面白い。
家づくりの設計に対する考えを変えさせてくれる本です。
こういう本、大好き!
設計をもっとお気軽に、楽しくしてくれる本です。
「建築家は住まいの何を設計しているのか」著者は藤山 和久さん
「建築家は住まいの何を設計しているのかの著者 藤山 和久さんは、元「建築知識」の編集長をされていました。すいません、本を読むまで考えたこともありませんでした。
編集者として建築・インテリア・家づくり関連の書籍多数にたずさわれています。
それだけではありません。本を作るときに多くの設計士と交流し、お話を伺っています。その時の話をまとめたのがこの本です。
最近の住宅建築業界で、気にあることがあります。それは「こうせねばならない」と言う考えがとっても強くなっていることです。言い方を変えれば「押し付け」とでも言えるでしょう。
私が全国で活躍している住宅設計の方とかと話をしていると「やっぱり建具はオーダーじゃないとダメだよね」とか、言っている方に会うことは珍しくありません。
私からすると「もう少し自由にやろうよ!」と言いたくなります。まあ、その場の雰囲気で言わないことが多いのですが。
そのような窮屈を感じさせられていた昨今、この本に出会いました。
書いてあったことは「雑誌に取り上げられるような有名な建築士さん達は、もっと自由に設計を楽しんでいた」と言うことです。
私も、それでいいと思います。
いえ、それがいいのです。
もっと自由に家づくりを楽しみましょう!
と言うわけで、この本の内容を少しだけお伝えします。
移動距離が長いのは不便という先入観にとらわれている人は、3歩かかる間取りを絶対に許容してくれない
昨今の家づくり
「動線をできるだけ効率よく、無駄は無く!」
これは、はい、正解です。
といいますか、正解の一つです。
ところが、このように書いています。
「いたずらに効率だけを追求すると、そのほかの大切な要素がさらさらとこぼれ落ちていく。その落ちていくものたちを、高野さんは『豊かさ』と呼んだ」
この章のタイトルもいいですね。
「家事ラク動線の落とし穴」
高野さんは、このようにも言っています。
「最近の家づくりは効率ばかりを言いすぎる」
家事動線が効率的なAの間取りと、一回りするけれど楽しいBの間取り、あなたはどちらがいいですか?
私も感じていたことなのですが、最近のお施主様を見て「ネットで得られた知識に振り回され、疲弊している施主達を危惧する声度々聞く」と言うことも。
高野さんは言ったそうです。
「私は何十年も住まいの機能だけを考えてきました。でも、あるとき、そればかり考えていても住まいはちっともよくならないと気づいたのです。」
さて、あなたはどのように考えますか。
住みてが何十年も寝起きした寝室は「ほとんど物置になってます」
これを言っていたのは建築家「中西 ヒロツグ」さん。実は、私はこのかたから少しだけ教わったことがあるのです。本当の先生はこれまた住宅屋さんなら誰でも知っているような方なのですが、そのサポートとして中西さんがついていました。あのリフォームの番組にも何回も登場して「匠」と呼ばれている方。話してみると、とっても気さくな人です。
本当の先生の方とはなかなかソリが合わずメタメタだったのですが、中西さんは少し私の事を面白いと思ってくださったようです。その中西さんの言葉です。
住みてが何十年も寝起きした寝室は「ほとんど物置になってます」
寝室を考えることは、収納を考えること。ウィークインクローゼットは、動線の分だけ収納スペースが減ってしまいます。
そこで、中西さんが推しているのは「寝室の壁一面に設ける『壁面収納』」です。
以前教わったことのある収納の草間先生も同じ事をおしゃっていました。
寝る以外の機能を持たせた寝室というものは、住み手の多くが早々に飽きてしまう
家づくりをしていて思うのは、いつも楽しい要望を伺える事です。お施主様とも一緒に楽しめる、いい仕事なのです。
ところが、早いうちに飽きてしまう方が多いそう。
建築家たちが明かす、お決まりの後日談だそうです。
住まいというのは、のんびりとくつろぐ場所ではないんです。朝から晩まであれこれと作業する場所なんです
キタ〜!
とでも言ってしまいそうな文章ですね。
「我が家でのんびりくつろぐという行為は、とても難易度が高い振る舞い」
なのだそう。
そうか、それで良いのか!実は、私は家でのんびりできないタイプなのです。家にいると何かしたくなってしまう。というか、仕事があるので家でやる。それが癖になっているので、余計のんびりできない。
受賞歴のある建築家がこのように言っていたそうです。
「家でのんびりくつろいでいる人なんて、現実にはほとんどいないからね」
なんと、夢を打ち壊す言葉でしょう!でも、それが多くの家庭の現実なのですね。
家族でくつろぐばは、食卓を中心に考えた方がいい
「家族でくつろぐ場は、食卓を中心に考えた方がいい」とのことなのですが、必然的に我が家ではそのようになってしまっています。
と言うのも、ソファーは子供のバックとかが脱ぎ散らかされ大変なことになっています。宿題のプリントとか、、、、。
我が子もこのブログを密かに読んでいるらしいのでここで、子供に警告を!
「おい、早く片付けておけ!今度は、捨てるからな!!」
私と同じ思いをしている方も、少なからずいらっしゃるでしょう。
そこで、おすすめしているのが、大きめのダイニングテーブルです。
畳1畳分:90cm×180cm
エスホームの打ち合わせに使っているテーブルがまさにこの大きさです。
なかなかこの大きさのテーブルは置けないかと思います。
その分、リビングとダインングをその時の使い方に合わせて使えるように調整するのです。
「広いリビングなんて、たんなる見栄の産物なんですよ」
ともベテランの建築家は言ったそうです。
でも、私は広いリビングが良いな。
いい加減な家を見るとほっとする
インスタとかで見るお家、キレイでカッコよくて憧れますよね。
でも、ある建築家は言うのです。
「いい加減な家を見るとほっとする」
この人は、あの吉村順三先生の元で実務を修業した増田さん。
吉村順三さんといえば、伊礼さんなど現在活躍されている建築家が大きな影響を受けた建築家です。
増田さんは言います。
「吉村先生は、吉村事務所の中で一番『建築家っぽくない』人でした。」
図面を描くことに夢中になっている増田さんには
「増田くん、そんなモノを描かなくても何か出来合いのものがあるんじゃないのかい?」
そして、著者の藤山さんは、このように書いています。
「建築家はクライアントのためにていねいな設計をしたつもりかもしれませんが、一歩引いてみると、そのほとんどは建築家の自己満足にすぎず、住みてが本当に望んでいることではないのかもしれません。むしろ『なぜだか分からないけれど、ここにいると落ち着く』という心の動きに、建築家はもっと敏感になるべきなんです。」
特に私が共感するのは「建築家の自己満足」と言う言葉。
建築家が目立ってはいけないと思うのです。
「お施主様の自己満足」が大切ですよね。
「見た目や性能の良し悪しばかりにとらわれていると、住むために、暮らすために必要なことは何なのか、自分でも分からなくなってしまいます。本当のところ、自分たち家族は住まいに何を望んでいるのか、建築家任せにしないで一度じっくりと考えてみると良いと思います。」
と著者の藤山さんは言っています。
本当にそうです。
もちろん性能のいいお家も住みやすくてもなるでしょう。実際に、私もそのようなお家を作っているのでそれも正しいと思います。
でも、もっと自由な家づくりをしてもいいのではないか、本当にそう思うのです。
と長々と書いてしまいましたが、これでもこの本の半分くらい。230ページくらいなので、それ程長くはないのですが内容の濃い本であることがわかっていただけるかと思います。
家づくりに悩んでいる方は、ぜひこの本を読むことをおすすめします。
きっと、家づくりの呪縛から解放されますよ。