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前回お届けした「那珂川町馬頭弘成美術館」と同じ年にできたのが、那須町にある「石の美術館」。
申し訳ない言い方ですが、栃木県民でもなかなか行かない場所に「石の美術館」はありました。
「石の美術館」と言う名前も、「隈研吾」さんが設計したと言うことももちろん知っていましたが、今まで行ったことがありませんでした。
よほど意識して走らないと、見逃してしまいそうなのが「石の美術館」
下の写真の右側が「石の美術館」
栃木県ではよくある街並みでね。
美術館とか建物を見に行っても、退屈してしまう事ってありませんか?私は小さい頃は母に連れられて美術館とかに行っていたのですが、正直退屈でした。
学生の頃、大学の課題やサークルのイベントで建物を見にいきましたが、「凄いな〜」くらい。
最近、意識して建物をみたり、アートフェスに行ったりするようにしていました。
見続けるとなんとなくわかるようになるものなのでしょうか。
「石の美術館」は、私にとって極上の美術館でした。
池に囲まれた美術館
行った時は雨。
その雨が、美術館の中にある池をより引き立てます。
写真だけではあまり気が付かなかったのですが、この斜めの通路がデザイン上の重要なポイントなのですね。
この斜めの通路によって、遠近感がより強調されているのです。
敷地はさほど広くないのですが、現地に行くと奥行きがとっても感じられます。この辺りのことは、写真では気が付きにくい。
アーチがアクセント!
このアーチの出入り口がいいアクセントになっていますね。
中は、このように木で補強されています。通常なら鉄骨が組んでありそうですが、この辺りも隈研吾さんのこだわりの一つなのでしょうか。
今の基準では、これだけ大谷石を積んで建物を作るのは、強度上とても難しいのです。
それにしても、鉄骨ではないからか圧迫感を感じませんね。
小屋裏とも一体化しているようです。
受付の建物から、左にある通路へ。
この通路には、仕上げの違った石が埋め込まれています。
通路を通り、右に曲がって再度池を渡ります。
石と光のギャラリー
石の美術館は、いくつかの建物に分かれています。
特に、どれから見ると言うのはなさそうで、案内も特にありません。
建物には、それぞれ鉄製の頑丈な扉があります。
開けていいのかどうか、迷いながら入っていきました。
イベントとして、「「中村 裕紀展 」共振 -resonation-」の作品が展示されています。
とってもいい雰囲気です。
下の写真の白い部分は、6mmの大理石で作られていて、外の光が透けているのだそうです。
茶室
奥の方にある小さな建物が茶室です。
日本で初めてつくられた石造の茶室だとか。
色が違ったりして、何種類かの石を使っているように見えますが、どれも芦野石・白河石を利用しているそうです。
石を焼いて、色を変えています。
入り口には「烏山和紙」を利用した引き戸。
「烏山和紙」は、前回紹介した広重美術館にも利用されていました。
自然素材だけでできているからか、とっても落ち着く空間です。
広くないのですが、ずっと居たくなるような。
石倉ギャラリー
ここには、石を利用したデザインの一部が展示してあります。
奥にはピアノもあるので、演奏会とかもしていそうですね。
左下にある、のべ〜とした物。
ご安心ください。
もちろん寝転んできました!
ここも、木で補強されています。
建物の四方を筋違で固めていますね。
この小屋組がトラスで組んでいますが、あれ?
通常のトラストは違った組み方をしていますね。
面白い!
石と水のギャラリー
石倉ギャラリーの奥にあるのが、石と水のギャラリー
建物の中に、池の水が引き込まれています。
とても素敵な空間ですね。
天井が低いのですが、それを感じさせません。
逆に、包まれているような安心感が醸し出されています。
暑夏には、この池に足を入れて、このテーブルで食事をしたら楽しいでしょね。
あかりの漏れている所は、穴が空いています。
その穴からの眺めがこちらです。
石と水のギャラリーにも、素敵な作品が展示してありました。
展示してある作品は、どれも素晴らしいものばかりでした。
この作品を見に行くだけでも価値あり!です。
トイレ
一緒にトイレも紹介します
もちろん、誰もいないところで撮影しています。
トイレにどれだけデザインを入れるのか、とっても興味があったのです。
奥にあるトイレのドア、右の壁はポリカーボネイト。
通常なら利用しない、安い材料ばかりです。
通常でしたら、紹介しないのですが、ここに隈研吾さんの作品作りがよく出ていたので紹介しようと思いました。
ディテールにはこだわらない
隈研吾さんの作品を見ていて(主に写真ですが)、気にあることがあったのです。
それは、雑に見えることがあること。
それが、このトイレにも見ることができました。
その回答が「日経アークテクチャーNo1196:2021-7-22 隈事務所 メガアトリエの挑戦」に書いてありました。
一部を抜粋して紹介します。
「ディテールにこだわりすぎるとコストが高くなってしまいますよね。時にはプロジェクト担当者が計画の一部について「もっとこうしたい」と固執してしまうこともあります。隈は意図的に「そこはデザインするな。セーブしろ」と言って自重させるのです。」
そうだったのか!と驚きでした。
多くの建築家は、
「神は細部に宿る」と言う、ドイツのミース・ファン・デル・ローエの言葉を大切にして設計します。
ところが、隈研吾さんはそれを止めろと言っていたのですね。
特に住宅の建築家は、この細部の収まりを徹底的に考えます。
伊礼智さんなどのお家を見ると、ここまで考えるのか、アイデアを出すのかと驚かされます。
隈研吾さんは、そこはやらないようです。
確かに、広重美術館もそのようなところがありました。
あの国立競技場も、色々と突っ込まれていたのは、今回のような理由があったのでしょうか。
偉大な建築家は、予算と闘う!
この「石の美術館」も、予算との戦いだったようです。
依頼した白井さんも「お金は無いから、2人の職人(70歳くらい)と石は好きなだけ使って良い」と言ったそうです。
そして4年間、ああだこうだ、すったもんだして、色々な試みをして、新しいディテールを開発しました。
思い出してみれば、安藤忠雄さんの「光の教会」もそうでした。
「予算が無い」と言うところからスタートしています。
予算が無い中でも、傑作は生まれてくる、良い例だと思います。
下の写真は、パネルとして展示してあった隈研吾さんの言葉です。
安藤忠雄さんもそうですが、隈研吾さんも、偉大な建築家は、誰もが考えられないような苦労もされているからこそ、このような作品を生み出せるのでしょう。
直島・豊島にあるような美術館
石の美術館は、世界中から人が集まる瀬戸内海にあるアートの島「直島・豊島」を思い出させてくれました。
建物も、展示してある作品も素晴らしい。
やはり、アートは面白い!
石の美術館
- 栃木県那須郡那須町芦野2717-5
- Tel:0287-74-0228
- Fax:0287-74-0373
- URL : http://www.stone-plaza.com