実家で改めて感じた「住み心地」

お盆休みも終わり、いつもの日常が戻ってきましたね。皆さんはどのようなお盆を過ごされたでしょうか。

私もこのお盆、久しぶりに実家でゆっくりと過ごしました。建築士として数々の住まいを設計してきましたが、改めて「住み心地」について深く考えさせられる時間となりました。そして同時に、家づくりを検討されている皆さんに、ぜひお伝えしたいことがあります。

古くて新しい、リビングの形を発見

父の家は、ダイニングとリビングが一体になっています。というより、ダイニングテーブルがそのままリビングなんです。

朝、父はそのテーブルで新聞を読みます。お昼は同じテーブルで食事をし、午後は近所の人が遊びにきたり、テレビを見たり。夜も集まるのはやはりそのテーブルの周りです。

この形は、私が子供の頃から一緒です。

父が座っている椅子は、長時間座っても疲れないよう配慮された、しっかりとしたダイニングチェアでした。背もたれの角度、座面の硬さ、肘掛けの高さ。すべてが父の体にフィットするように調整・工夫しています。

テレビも大きくなりました。

これこそが「古くて新しい」リビングの形なのかもしれません。

昔の日本の家では、茶の間のちゃぶ台が家族の中心でした。そこで食事をし、勉強をし、家族の時間を過ごしていました。父の家は、それを現代風にアレンジしたものだったのです。

下の写真は随分と前に撮ったものですが、父とリビングです。親戚が集まるため、テーブルがつなげてあります。父はいつもここに座っています。私はテーブルの反対側に座っています。

ダイニングテーブルとソファーが分かれていないので、必然的にいつも一緒にいることになるのです。

正直にいうとゴチャゴチャしている部分もあります。でも、家族の部屋だと思うと嫌ではないんですよね。最低限は片付けてありますので。

現代に通じる「ダイニングリビング」の魅力

建築士として多くのお客様とお会いする中で、最近こんなご要望をいただくことが増えました。

「リビングは必要ですか?ダイニングと一緒でも良いのでは?」

特に、コンパクトな住まいをご希望のご家族や、家族の時間を大切にしたいというご家族から、よくお聞きする言葉です。

父の家での数日間を過ごして、私は確信しました。この「ダイニングリビング」には、深い魅力があるのだと。

メリット1:家族の自然な集まり
ソファに座ることの「特別感」がない分、家族が気軽に集まります。お茶を飲みながら、宿題をしながら、本を読みながら。それぞれが自分のペースで過ごせます。

メリット2:空間の有効活用
ダイニングとリビングを分けない分、一つの空間が広く使えます。限られた面積を最大限に活かせる、現代住宅にぴったりの考え方です。

メリット3:長時間の快適性
良い椅子に投資することで、長時間座っていても疲れません。テレワークが増えた今の時代にも合っています。

メリット4:掃除・メンテナンスのしやすさ
家具が少ない分、日常のお手入れも楽になります。忙しい現代の暮らしには嬉しいポイントです。

このリビングダイニング。最近では「リビダイ」とも呼ぶ方もいるようですね。

大切なのは「椅子選び」

ダイニングリビングを成功させる最大のポイントは椅子選びにあります。

父の椅子を改めて観察してみると、座面の奥行きが一般的なダイニングチェアより少し深く、背もたれも若干後傾しています。長時間座ることを前提とした、絶妙なバランスの椅子でした。

家づくりの際には、家具も含めて設計することの大切さを、父の家で改めて実感しました。

「住み心地」とは何でしょうか

50代になり、これまで多くのお客様の家づくりに携わってきて思うのは、「住み心地」は数字だけでは測れないということです。

もちろん、断熱性能や気密性能は大切です。私も気密測定技能士として、数値の重要性は十分理解しています。でも、それ以上に大切なのは:

  • 家族それぞれが安らげる居場所があるか
  • 自然の変化を感じられるか
  • 無理のない動線で日常を送れるか
  • 家族の気配を適度に感じられるか

実家で過ごした数日間、これらのことを身をもって体験しました。父なりの工夫、父だからこその温かさがそこにはありました。