一級建築士として、これまで数多くのお住まいに関わらせていただいてきましたが、最近特にお客様からご質問の多いテーマの一つが「エアコン」についてです。今日はその中でも、「家電量販店のエアコン」と「工務店のエアコン」の違いについて、少しお話しさせていただければと思います。
価格が魅力の家電量販店
エアコンは、確かに家電量販店で購入された方が価格面ではお得に感じることが多いでしょう。量販店さんは、メーカーさんとの年間契約や大量仕入れによって価格を抑えることができるためです。価格を第一に考えるのであれば、それもひとつの選択肢だと思います。
しかし、もし「そのエアコンが、これから何十年と暮らす家に本当に合っているか?」という視点で選ぶなら、工務店が提供するエアコンにも目を向けていただきたいのです。
お家に合ったエアコンを選ぶなら?
実は、私たち工務店もエアコンを取り扱っています。そして、私たちは「家全体の設計」と「空調設計」を一体として考えます。特に高断熱・高気密の住宅が増えてきた今、空調設備の選定は住まいの快適性を大きく左右する大切なポイントです。
一見すると、量販店のエアコンと工務店のエアコンは同じように見えるかもしれません。ですが、実は「配管の長さ」や「高低差への対応力」に大きな違いがあります。
例えば、量販店で一般的に取り扱われているエアコンは、配管の長さが12〜15m、高低差は8〜15m程度に設定されています。
一方で、私たちが扱うエアコンは、配管が20〜30m、高低差も15〜20mまで対応可能なものを使うことが多いです。
下の表は、三菱のエアコンのカタログ(2025年春夏号)から抜き出しました。
カタログの後ろの方に掲載されていて、配管の性能が書いてあります。
上の表が家電量販店モデル、下の表が工務店モデルです。
「最大内外接続配管長」と「接続冷媒配管」、「最大高低差」と「高低差」を見比べてください。
大きな差があるのがわかります。


この差は、工務店ならではの「隠蔽配管(いんぺいはいかん)」という工事方法を採用することが多いためです。隠蔽配管とは、エアコンの配管を壁の中や天井裏など、見えない場所に美しく納める工法です。完成後の家の外観や内観を損なわず、空間に調和するのが大きな魅力です。
しかしその分、どうしても配管が長くなり、また高低差のある場所まで対応する必要が出てきます。そうした状況に対応できる仕様のエアコンを選定することが、長く快適に使っていただくためには不可欠なのです。
15mの高低差に対応できるというと、1階を3mと考えると、実に5階建てのビルに相当します。実際にそこまで配管を引くことは稀ですが、「そこまで対応できる機器を使っている」という安心感は大きいものです。
エアコンをつけるなら工務店!
家電製品としてのエアコンではなく、「住まいの一部」としてのエアコン選び。ご新築やリフォームをご検討中の方には、ぜひこうした視点も含めて、納得のいく選択をしていただきたいと願っています。
大切なのは、価格だけでなく、「そのエアコンが、住まいに本当に合っているかどうか」。それを一緒に考えていけるのが、私たち建築士や工務店の役割だと思っています。
お客様の暮らしが、少しでも快適で美しいものになるよう、これからも丁寧にご提案をしてまいります。どうぞお気軽にご相談ください。
参考資料
下のカタログが、今回参考にしたものです。
右上の「総合カタログ」の右にある「住宅設備用」と書いてあれば工務店が提供するエアコンです。「家庭用」と書いてあれば家電量販店で発売されているエアコンです。

注意:工務店でも家電量販店の製品を提供することもあります。利用するエアコンがこちらのタイプなのか、確認してください。