私の89歳になる父が散歩中に転倒し、右手を骨折してしまいました。
幸い近所の方がすぐに気づいてくださり、救急車を手配してくださったおかげで、大事には至りませんでした。ですが、入浴もままならず、慣れない不自由な暮らしが始まりました。
けれども本当に怖かったのは、その夜のことです。
ベッドで休んでいた父が、寝返りの拍子にベッドから落ちてしまい、なんとテーブルとベッドの間に挟まってしまったのです。骨折した右手には力が入らず、スマホも操作できず、声も届かず……。誰にも気づかれないまま、翌朝までその状態でいたというのです。
あと少し、運が悪ければ、命を落とすような出来事でした。
“動ける”という安心感を取り戻すために
父は昔から飄々とした性格で、「大丈夫だ」と笑っていましたが、私は心から「これは対策をしなければ」と感じました。
そこで、本人の自立を尊重しながらも、安全を守れるベッドガードを探すことにしました。ただ、世の中に多いのは“完全に仕切るタイプ”のベッドガード。これでは、父のように自分で動こうとする人にとっては、逆に不便なのです。
そんな中で出会ったのが、東京インテリアで見つけた「手すりと一体になったベッドガード」でした。

支えとしての安心感がありながら、動きを妨げない設計。父もとても気に入り、今では同じものをもう2台追加して使ってくれています。
住まいの形が、人生の安心に繋がる
この体験を通じて、あらためて感じました。
家具一つ、手すり一つの形状によって、その人の暮らしの質や、命を守る力は大きく変わるのだと。
私が建築士として心がけているのは、「安心して暮らし続けられる住まい」をつくることです。今回のことは、そんな想いをあらためて胸に刻む出来事でした。
もしご家族の中に、ご高齢の方がいらっしゃるなら。
「どんな風に過ごしているか」「どんな風に動いているか」を、ぜひ少しだけ意識して見守ってみてください。
“少しでも自分で動けること”が、どれほど大切なことか、私も身をもって感じました。