レオパレス問題と完了検査

レオパレス問題、予想以上にしばらく続きそうです。

建築業界では、数年おきに大きな問題が起きています。
2005年に起きた姉歯の構造計算書偽造問題を思い出す人も多いでしょう。
また、手抜き工事も話題になりました。

今回、最初に取り上げられた界壁(今回問題になっている壁)を作るなんていうことは、アパートを手がけている人であれば当時としても常識的なことなので全く言い訳の出来ないことだと思います。

ましてや、アパートを専門にやっていたような会社ですから。

下野新聞 2019年2月8日より
下野新聞 2019年2月8日より

私も最初は賃貸住宅

約27年前になりますが、私も建築の仕事を始めた時は木造の賃貸住宅でした。

確認申請や、電気配線図などを書いていたのを覚えています。

東京の会社であったため準防火地域(火に強い建物を作るように指定されている地域)の建物も多かったのです。
外部に使う材料や作り方の指定も厳しかったように思います。

ただ、これらは当時も今も大きく変わっていません。
ですから、当時学んだ事が今でも普通に役に立っています。

実は、一つ大きな違いがあります。
それは「完了検査」です。

昔は、完了検査を受けなくても問題にならなかった

建物は完成すると完了検査を受けなくてはいけません。
今では常識です。
受けないと大変な事になってしまいます。

ところが、当時は「完了検査」を受けなくても大きな問題にならなかったのです。

というわけで、ほとんどの建物は受けていなかったようです。

もっと遡れば、大工さんに頼むと、図面と完成した建物が違っている事がよくあった、という話を聞くほどです。

うろ覚えだったので、調べてみたらこのようなデータが出てきました。

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を 活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を 活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」は平成 26 年7月に 国土交通省により作られたものです。

このグラフを見るとわかるのですが、1998年(平成10年頃)、完了検査を受けている建物は40%もありません。

【参考】特定行政庁(建築主事)・指定確認検査機関における検査済証交付件数・完了検査率の推移
【参考】特定行政庁(建築主事)・指定確認検査機関における検査済証交付件数・完了検査率の推移
※完了検査率=当該年度における検査済証交付件数/当該年度における確認件数
検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を 活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン平成 26 年7月 国土交通省 より抜粋

では、どのような流れで完了検査がされるようになったのでしょうか?
時系列で追ってみましょう。

阪神大震災により、基準法が見直される

1995年、阪神大震災が起こりました。
この時に問題になったのが、違反建築や欠陥住宅。

1998年、建築基準法が阪神大震災により大きく見直されました。
建築確認・検査の民間開放、中間検査の導入により、違反建築の発生を防ぐ仕組みを作ったのです。

2002年、住宅金融公庫が、完了検査済書を必要とします。
要するに、家をつくったら、完了検査を受けないと融資しませんよ、という事です。

2002年〜2004年、完了検査の受検率アップの為の3カ年計画を実施

2003年、国土交通省から各金融機関に対して「完了検査に基づく検査済証のない建築物への住宅ローンの融資を控えるように」といった要請がされました。

以降、銀行も完了検査済証を求めるようになり検査割合は90%に向上しました。

問題物件は2001年までの建物

レオパレス問題に話を戻します。

今回問題になっているアパートの建築時期を見てみると

「1996年〜2001年に建てられた」とされています。

日本全国が阪神大震災を経験し、建築業界でも法律や制度の見直しがされていた時期です。

阪神大震災により学んだことは「火にも、地震にも、強い建物をつくる事の大切さ」でした。

あの、阪神大震災のインパクトを誰もが忘れられないその時期、あのような建物を建てられた事に、改めて驚かされました。

まるで
「厳しくなる前に安く建ててしまえ!」
と思っていたかのようです。

以前の建築問題との違いは、浄化されないと言う事

姉歯事件や、手抜き工事の問題と、今回のレオパレスの問題は大きく違う点がもう一つあると思います。

姉歯事件も、手抜き工事問題を起こした会社も小さな組織です。
大きな問題になればそれらを起こした会社や組織は成り立たなくなりなくなり、無くなります。
倒産です。
この倒産が社会的な浄化作用になり、問題のない組織や会社が残っていくという社会になっていたと思います。

ところが、今回は大きな会社なので、これだけの問題を起こしながらも生き残る可能性があるのです。
確かに、倒産してしまうと困る人もたくさん出てしまうでしょう。
しかしながら、社会的な浄化作用が働かなくなってしまうのです。

ここが、今までと大きく違う点の一つだと思います。

大手の不祥事が続く時代

ここのところ、大手企業の不祥事が続いています。

以前は「大手だから大丈夫だろう」と言う思いを持っていた方も多いと思いますが、残念ながらそうでは無くなってしまっているようです。

小さな会社でも、いい仕事、いい家づくりをする会社はたくさんあります。

これからの時代、真面目にしっかりとつくる会社が生き残れなくなり、手抜きをしても安くつくる会社が生き残るような社会にだけはなってほしくないものです。

あなたも、見極めが必要ですよ。

参考文献

  • 「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を 活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」:平成 26 年7月  国土交通省
  • 「建築基準法に基づく完了検査全数実施の方策に関する研究」増渕 昌利 2014
  • 「検査済証がない建築物の救済策? 国土交通省がまとめたガイドラインの背景とは」:不動産コンサルタント会社「リックスブレイン」代表平野雅之 2014年 09月11日

レオパレス問題と完了検査” に対して2件のコメントがあります。

  1. 増渕昌利 より:

    拙論文を取り上げていただきありがとうございます

    1. hiro より:

      増渕さん、こんにちは。
      返事が遅れてしまい、申し訳ありません。

      コメントありがとうございました。

      こちらこそ、参考にさせていただきありがとうございます。

      これからも、よろしくお願いします。

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