2世帯住宅の失敗を防ぐ、大切な事。2世帯住宅は家づくりの失敗ではなくて家族づくりの失敗!

今までに何棟もの2世帯住宅を建てさせていただきました。おかげさまでどの2世帯住宅もうまくいっているようです。えっ!新しい家だからうまくいくのが当たり前だと思いますか。2世帯住宅は、失敗が多い住宅なのです。

お引き渡しの時にお客様から言われた言葉、「実はもう一棟家があるのです。
親が実家の隣に建てた家。そこを出てきました。」親が作った家に一緒に住んでいるのが嫌で出たくて出たくて、新しい家を建てたいとお打ち合わせ中に泣いていた奥様。色々な方とお話をしてきました。

家族でも2世帯になると他人の要素も入ってきます。それが大きなストレスになり、一緒に住む事が辛くなってくるのです。その部分に、ちょっとした気遣いを持っていただければ2世帯住宅はうまくいきます。焦らず、そのポイントを知ってください。

2世帯住宅の計画の仕方は、通常の家づくりとは違うのです。

 

2世帯住宅は、3タイプ

2世帯住宅は、大きく分けて3タイプあります。「隣接型2世帯住宅」「同居型2世帯住宅」「完全2世帯住宅」です。どれも気遣いの仕方は一緒なのですが、どのタイプで2世帯住宅を作るかでもお互いのストレスが変わってきます。それぞれの特性を知りながら考えていきましょう。

隣接型2世帯住宅

「隣接型2世帯住宅」は、同じ敷地内に隣同士で別々な住宅に住むタイプです。多くの場合、親が土地を提供し親の建物の隣に子供が家を建てることが多いパターンです。最近増えています。お互いの家族のプライバシーを一番守りやすいタイプです。

子供も土地を用意する必要がなく、その分の費用が浮きますし、建物に費用をかける事もできます。両親は、今まで住んでいた家に住み続けられるのも良い点です。

ご主人の両親と一緒に住む場合に多く採用されます。

同居型2世帯住宅

「同居型2世帯」とは、1棟の中で大きく分ける事なく生活するタイプです。主に、玄関やお風呂など共有するスペースが多くあります。LDKや洗濯室は別々にする事も、一緒の場合もあります。

共有スペースが多いほど、建築コストを抑えられるのが「同居型2世帯」の特徴です。予算に合わせて共有スペースを決めて行くのも良いでしょう。費用の掛かりがちな設備などを共有するのがコストを下げるコツです。

完全2世帯住宅

1棟の建物なのですが、玄関も、キッチンやお風呂などの住宅設備も全く別々になっている2世帯住宅を「完全2世帯住宅」と呼んでいます。ご両親と、若夫婦のそれぞれの世帯を行き来できるようにしたり、出来ないようにしたりします。両親の土地に家を建てる場合、そもそも両親の住んでいた家が古くなり一緒に立て直したいと言う場合に利用されます。

ご主人の両親と一緒に住む場合に多く採用されます。

完全2世帯住宅の場合、両世帯の間を行き来できるかどうかで建築費用や税金のかかり方も変わってきます。

2世帯住宅で絶対失敗するパターン

2世帯住宅の相談を受けて、絶対に今までうまくいかなかったパターンがあります。それは、両親の父親が一番前に出て話を進めようとする場合です。

「大丈夫、息子夫婦は私の言う事なら絶対に聞くから。金も俺が出すから心配しなくても大丈夫!」
と言うお話を伺ったことは何度もありますが、このような方の場合には絶対にうまくいきません。

ご両親は、息子さんがご家族を持った時点でご両親との関係は今までとは違うのだと考えなくてはいけません。息子さんのご家族と、ご両親と息子さんのつながりの強さは、息子さんのご家族との方が強くなっているのです。

2世帯住宅で一番難しいのは、息子さんの奥様です。ほとんどはこの方が嫌になり失敗します。確かに、このような事を言われたら息子さんの奥様も引いてしまうでしょう。また、本当に息子さんが両親のことばかり聞いていたら、奥様が出て行くことになるかもしれません。

2世帯住宅は、一番弱い人を中心に計画を進める

2世帯住宅の計画をする場合、どのような立場の方々が住むのかをお互いに理解しなくてはいけません。そして、一番立場の弱い人が中心になって家づくりを進めることをお勧めします。

ご主人の両親と、若奥様が一緒に住む場合

一番多くて一番難しいのが、この「ご主人の両親と、奥様が一緒に住む場合」です。ほとんどの奥様は、ご主人の両親と一緒に住むことに抵抗感を持っています。顔では良いといっていても心のどこかで抵抗がある、そのくらいに考えていた方が間違いがないでしょう。

特に若奥様は子供が小さい頃は家にいる時間が長くなります。ご主人は仕事でいなくて、気を使わなくてはいけないご両親と一緒にいたら疲れてしまいます。このストレスは、計り知れません。

若奥様が疲れてしまわないためにも、ご主人のご両親と若奥様が一緒に住む場合には若奥様を中心にお話を進めてあげてください。若奥様の趣味や嗜好を多く取り入れてあげてください。できれば、疲れた時に若奥様が一人で休める場所が作れると良いですね。ご両親は若奥様のわがままを笑って聞いてあげる、そのくらい大きな気持ちでいてあげてください。

奥様の両親と、ご主人が一緒に住む場合

「奥様のご両親とご主人が一緒に住む場合」は、まさにサザエさんのご家族。マスオさんが家で敬語を使って波平さんとお話をしています。あの主従関係が生じるようになります。

ご主人も、奥様のご両親と一緒に住むので疲れます。そのような時のためにもご主人のためのスペースを作ってあげると良いでしょう。それでも、ご主人の場合は仕事に行くので家にいて奥様のご両親とずっと一緒にいると言うことは少ないので、ストレスは奥様の場合と比べて少ないようです。

ご主人の両親と、奥様の両親、3世帯が一緒に住む場合

ご主人の両親、奥様の両親、と3世帯で住むお家もありました。この場合、どのご家族と言うことではないのですが、できれば若夫婦が中心になって計画を練った方が上手くいきます。若夫婦の間でも、お互いに気を使いますので、ご両親同士が揉めてしまう事がないように注意してください。

間取りの作り方は、若夫婦を中心に、それぞれの両親が離れるようにした方が良いかと思います。それぞれの両親は完全に他人同士なので気が合わない事もあるはずです。距離をとってあげてください。

間取りの注意点

間取りを考える際にも2世帯住宅独特の気遣いが必要です。通常の家とは違うので、ご両親と若夫婦の間でもお互いの意見を伝えられる関係性も大切です。意見を出しすぎて、喧嘩などにならないように気をつけましょうね。

共有スペースを有効に

2世帯住宅の場合、マンションと一緒で共有スペースを有効に利用できるように計画しましょう。

同居型2世帯住宅の場合には、LDKやお風呂が共有スペースになることが多くあります。使用する時間帯など重ならないように家を作る時から話しておいてください。やっぱり別にしておけばよかったとならないように。

隣接型2世帯住宅と完全2世帯住宅は、主にお庭や駐車場が共有スペースになります。庭をどのように利用するのか、雑草の管理はどうするのか、車をどのように止めるのか話し合っておきましょう。

寝室とリビングが重ならないように

2世帯住宅は、多くの場合2階建てになります。その際、ご両親の寝室の上にLDKを配置しないようにしましょう。LDKは動く事も多く音が発生しがちです。その下にご両親の寝室があると、寝るのが早い高齢者は2階の音をうるさいと感じてしまいます。どうしても重なってしまう場合には、音が下の階に響きにくくする方法があります。専門的な方法なので専門家に相談をしてください。

家族同士のプライバシーを守れるように

それぞれ家族のプライバシーが守れるように工夫をしましょう。

隣接型2世帯住宅と、完全2世帯住宅の場合には、玄関位置を離して設置するだけでも気分が大きく変わります。

同居型の場合には若夫婦が2階に部屋を持つ事が多いのですが、この場合には玄関の近くに階段を付けてすぐに2階に行けるようにするなども良いでしょう。

洗濯機は一緒?

女性が気にされる事が多いのがこれです。洗濯機を一緒に使うのか、別にするのか。一緒に洗うのであれば1台の洗濯機でいいかもしれませんが、さすがに2世帯だとそうはいきません。かと言って1台の洗濯機を2家族で利用するのは、若夫婦に子供ができると洗濯回数も増えるので時間的にも無理がありそうです。そのような場合には洗濯機を2台置けるようにします。

洗濯機を2台にする場合、内1台は2階に置くことが多くなります。この場合、2階の洗濯機の音は1階の部屋に響きやすくなります。ご両親の寝室の上に洗濯機を置くことになっていたとならないように、間取りなどを工夫しましょう。

できるだけコンパクトに

2世帯住宅は大きくなりがちです。完全2世帯ともなると、60坪以上になる事がほとんどです。同居型2世帯住宅でも40坪以上の面積が必要となる事が多い。このように大きくなってくると、それに伴い廊下の面積が大きくなってしまい効率の悪い間取りになりがちです。当然ながら費用もかかりますので、無駄を無くし少しでもコンパクトにして費用を抑えるようにしましょう。

費用負担は、それぞれが出すように

家づくりを行う上で心配なのはお金の事です。それが2世帯住宅になると少し複雑になります。それは、誰が、いくら負担するかを考えなくてはいけないからです。

若夫婦が出すのか、ご両親が出すのか、皆んなで負担するのか。

ご両親との相続までも考えた場合、税金のことを考えるとご両親ができるだけ多く負担をした方が良いと言えます。これは、相続の際に現金でもらうよりも、建物にお金を使ってもらいその減価償却により資産価値が低くなったお家を相続した方が相続税を低くできるからです。

実際に住む人の気持ちになると、若夫婦がある程度負担をし、それをご両親が助けるというスタイルが良いようです。と言うのも、若夫婦が負担をせずにご両親だけで費用を賄ってしまうと、若夫婦はその家に気持ちが入りませんので何か嫌な事が起きると出ていってしまう理由になるからです。少しでも負担をして登記上の持分を持っておけば嫌な事があっても我慢できるようになります。

長いお住まいの中で、良いことだけではありません。どんなに良い生活をしていても上手くいかないことが起きるかもしれません。そのような時に、少しでも我慢するための要素をあえて残しておく、そうすれば時間が解決してくれる事もあるでしょう。

お互いに、気を使わなくて良いように!

最後に、2世帯住宅の場合には、それぞれのご家族が気を使わなくても住めるようにできるかどうか、が鍵となります。今は良くても10年ご、20年後はわかりません。一番大切な事は、お互いに干渉すぎないようにする事です。以前建てさせていただいた奥様が言っていました。

「最初は、同居型が良いと思っていたけれど、完全2世帯にして良かった。考えてみたら、私がここに嫁に来た時にも義母に色々と言われて大変だったの。お互いに気を使うと疲れるしね。」

あなたは、どのような2世帯住宅にしますか。

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