なぜ、名建築をテレビで1500軒もみた人が家づくりを失敗したのか。その人は渡辺篤史さん!

 

素敵な家を見れる「渡辺篤史の建もの探訪」

「時々、遠くを見つめる、不安そうなあなたの横顔、、、、」
と、小田和正の歌声で始まる番組といえば、超長寿番組の一つ「渡辺篤史の建もの探訪」ですね。

建築業界でも有名な人が出ていたりして、出た人にとってはかなりのステイタスになるようです。

もう30年を超えているのでしょうか。見に行ったお家は約1500件にもなるそうです。確かに、毎週1軒づつ見ていればその数になります。すごい数ですね。

その司会者といえば、これもずっとこの人。渡辺篤史さん。丁寧に紹介して、説明がお見事。本当に感心します。

では、渡辺篤史さんが建てた家は、どんなに凄いのか、使いやすいのか、住みやすいのか、カッコいいのか、期待大ですよね。ところが、

ところが、渡辺篤史さんの家は大失敗だったそうなのです。
本人が「渡辺篤史の建物探訪」の中で言っています。

写真はテレビの中で語る渡辺篤史さん。著作権の関係上、思いっきりのボカシです。

「建もの探訪」の渡辺篤史さんの家は素敵な家だった

それでは、渡辺篤史さんのお家は、どのようなお家だったのでしょうか。

  • ・コンクリートの打ちっ放し
  • ・2階建+ロフト
  • ・半地下有り
  • ・屋上庭園あり

ここまでを聞くと「さぞかし凄い家に住んでいるんだろうな〜、」と思いますよね。設計士に頼んで設計をしてもらったようです。
打ちっぱなしなんて、費用がかかるのでなかなか出来ません。半地下に屋上庭園まであるのです。さすが、芸能人は違うなと思ってしまいます。

とっても素敵な家になるはず、だったのですが、、、、

この家を建てた時に「渡辺篤史の建物探訪」で見ていたのは700棟ばかり。良い家も多かったとお見ます。

しかし、しかし、渡辺篤史さんの家は何が悪かったのでしょうか。

素敵な家になるはずだった「建もの探訪」の渡辺篤史さんの家は、何が失敗だった?

多分、見た感じは誰もが羨むほど素敵なお家だったのでしょう。モダンでカッコ良い。では、何がダメだったのでしょうか。

失敗① コンクリートの打ちっぱなしは、寒くて暑い!

こんな事、と言ってはなんですが建築家の中では常識です。
コンクリート打ちっぱなしの家は「寒くて暑い」のです。

あの安藤忠雄さんも笑って言いますね。特に初期の頃の作品で、洋服デザイナーの「コシノジュンコ」さんの家があります。写真なども公表されていてとっても有名なのですが、住んでいたコシノジュンコさんは大変だったそうです。

特に冬。寒くて家の中でスキーウエアを着込んでいたとか。

渡辺篤史さんの家には床暖房をつけたそうで生き延びたようです。
それにしても、エネルギー代が高騰してしまっている現在、どのように過ごしているのでしょうか。

コンクリート打ちっ放しの建物

失敗② 音が響きすぎるオーディオルーム

「建もの探訪」の渡辺篤史さんは、オーディオ好きなのだそうです。あの年代の男性は、オーディオ好きが多いですよね。

そのため、地下に12畳のオーディオ専用の部屋も作ったのだそうです。この家の一番の楽しみ!だったそうなのですが、、、

音が酷いのだそうです。どのように酷いのかと言えば、響きすぎ。想像するに、吸音の機能をほとんど持たせなかったのでしょう。

私は大学の時に音響関係の研究をしていたので、学校に実験室がありました。その名も残響室。5角形で並行な壁は一つもありません。そこで音を響かせると15秒くらい音が反射しあって残ります。音楽が聴ける環境ではありません。

ちなみに、音楽ホールは、約1.5〜1.6秒。
多分、渡辺篤史さんの部屋も音が響き合って残ってしまったのでしょう。

その上、四角の部屋だと音がより響いてしまいます。定在波が発生してしまうのです。定在波とは、ある波長が響いてしまい雑音に聞こえます。これを応用したのが、各地の寺社仏閣にある「泣龍」です。泣いている原因を科学的に言うと、定在波が発生しているとなります。これは家の中でも発生してしまうことがある、厄介な音なのです。

通常の木造住宅などは下地が石膏ボードですからそれほどでないにしても、コンクリートは響きまくります。

これを解消するには、壁際に吸音用のカーテンをかけたり、吸音材を建てたり壁に貼ったり色々な方法があります。難点は、カーテンや吸音材は高い。特に音響用は高い。

困ったものです。

良いところは、しっかりしているところ!

「建もの探訪」の渡辺篤史さんの家に友達が来た時には聞かれるそうです。

「良いところないの?」

そこで答えるのが、

「しっかりした家だね」

確かに、この構造的な強さはコンクリートの家に木造住宅は敵いません。

それにしても、素敵なお家を700棟も見てきて、たくさんあった憧れを実現したお家、なぜ失敗してしまったのでしょうか。

設計士にあなたの希望をしっかりと伝えることが大切!

この「渡辺篤史の建もの探訪」が放送されたのは、2018年の年初。でも、今でも心配になることがあります。

なぜ、このような失敗をしてしまったのでしょうか。良いところを沢山見て来たはずなのに。その原因を探ってみましょう。

希望を伝えていない!

まずは、これかも知れません。
渡辺篤史さんの希望をきちんと設計士に伝えていなかったのではないか。例えば「ここと、ここに、このくらいの部屋があればいいや」と自分の考えだけを伝えてしまっていた。

このような方は、家づくりが面白くなってしまった人に少なくありません。間取りも自分で考えて、予算だけ心配しているような方です。このような方は、ユーチューブやインスタで情報を集めるのは得意なのですが、そこにリスクが潜んでいるなど考えないのです。

コンクリート打ちっ放しの建物は、音が響きやすいなど考えなかったのでしょうか。通常の会話だけであればともかく、スピーカーを使った音楽にまで。
ちなみに、鹿沼市にある歯の機械を作っている「ナカニシ」のホールに回廊があるのですが、ここの手すりは一見コンクリートに見せかけて特殊な布で作られていました。理由は音が響かないようにだそうです。これがプロの仕事ですね。

ネットから情報を集めるのはとても良いと思います。しかし、そのデメリットをしっかりと説明してくれる設計士を探すことをお勧めします。

あなたは家づくりの素人です。あなたの夢を実現するのがプロの仕事の一つです。出来るできないを説明する。そして、より良くするのが良いプロの仕事です。

しっかりとデメリットを把握し、できる限り問題がなく解決していくことが大切です。

希望を聞かない設計士

渡辺篤史さんの話からは離れますが、希望を聞かない設計士も少なくありません。

「私に設計を信じてください。絶対に、良い家を作りますから!」

と言う方です。それにこのような住宅会社もあります。

「設計は、1回までです。」

凄いですよね。間取りを1回で決めろと言うのですよ。大手の住宅会社の話です。

実際に、建築士が自邸を設計する際に、悩まない人はいないのではないでしょうか。あれもやりたい、これもやりたい、あ〜、まとまらない。と思っているうちに新しい設計手法を知って、振り出しに戻る。これの繰り返し。

自分の家もなかなか出来ないのに、人の家は2〜3回で決めろ!どう言うことなのでしょう。

あの人の設計が好きだったはずなのに

以前の建築士会での集まりの話です。

数百人集まっている建築士の方々へ、お話がありました。
それは、

「お客様の、本当のご希望を聞いて家を作ってください。」と言うことでした。

どう言うことかというと、あるご夫婦の話です。
そのご夫婦は、ある設計士の家がとっても気に入ったのだそうです。そこでその設計士にお家を設計してもらい家を建て住み始めました。

ところが、作った家が住みにくい。生活してわかったことは、あの設計士のテイストは自分たちには合わない。写真などで見ていたときは良さそうだったのですが。

そこで、自分たちが住みやすいように家具などを変えてしまいました。ところが、頼んだ設計士さんは真面目な方。2年に1度くらい見に来るのだそうです。

設計してもらった家を変えてしまったなんて言えないご夫婦。設計士にもプライドがありますし。

そこでご夫婦が行ったことが、設計士が来る時だけ昔の家に戻したのだそうです。
先生が帰った後は、変更した家にまた戻す。

こんな事をしている方がいらっしゃるのだそうです。そこで締めの言葉が、

「しっかりとお客様にあった建物をつくりましょうね!」

とかでした。どんなに有名な方でも、このような家づくりになってしまうのです。写真などで見た感じだけで良い家ができるかは分かりません。

では、どのようにすれば良いのでしょうか?

間取りを考えつつ、住宅見学会へ!

私のおすすめの方法は、何度でも間取りを書き換えることです。何度も書き換えていると、いつの間にか心が落ち着いてスッと落ちることがあります。そこまで考えましょう。

ただし、間取りを紙の上だけで考えていてはいけません。紙の上では想像することも難しいですから。

そこで、住宅見学会へ参加しましょう!

本物のお家を見ながら、あなたが考えた「理想のお家」の図面と見比べるのです。図面からでは想像できないことが見えてきます。

これがとっても大切です。

家づくりは、
間取りを紙の上で考えて、見学会で確認して新しい情報を得、また見学会へ参加する、これの繰り返しです。

あなたの家は失敗しないように、しっかりと相談して要望を伝えてくださいね!

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